S サミシイノ?
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幸福な屍体
2012.09.11
そういえば、アメリカの某科学雑誌を読んでたらこんな研究論文が載ってた。
恐怖を感じながら死んだバッタの死骸は、
安らかに死んだバッタの死骸と比べて体内の炭素の割合が4%増えているらしい。
その結果、恐怖を感じながら死んだバッタの死骸が含まれた土壌の落ち葉の分解速度は大幅に遅くなるんだそうだ。
どうやってバッタに恐怖を与えるかっていうと、
実際に食べてしまわないように糊で口をふさがれたクモをバッタのカゴの中に入れて、
クモに食べられる直前までの恐怖をバッタに散々味あわせてから殺すらしい。
バッタもクモもホントにお疲れさまって感じだが、
そう考えると、僕たち人間や、捕食者って呼ばれる生物の身体には、
何千何万っていう、死に対する恐怖の化合物が禍々と蓄積しているのかもね。
なんてことを考えていて、ふと、
かつて〈ヴァンパイア〉と呼ばれたモンスターやシリアルキラーたちが飲んだ犠牲者の血の味と、
サイモンの飲んだ血の味は違っていたのかもしれないとか思ってしまった。・・・・不謹慎かもだけど。
僕がまだアメリカにいた頃、サイモンが撮影した犠牲者のビデオ映像がネットに流失してて、
運良く、僕も見ることができたんだけど、
映像の中の彼女は、今まさに死のうとしているにも関わらず、
ほんの数日間、家を離れるだけような気安さで、サイモンに語りかけていた。
そして苦しみもなく、それこそただ眠るように息をひきとっていた。
これは、ちょっと衝撃だった。
冷凍庫の柩に納まった遺体はまるで王子様の登場を待ちわびながら眠る白雪姫だった。
そういえばその犠牲者は、サイモンのことを《my prince on a white horse》と呼んでいたっけ。
幸福な屍体。
そんな言葉が浮かんだりした。