最後に、サイモンの近所に住んでいたというS夫人のインタビュー。

「何からお話すればいいかしら・・・、
　ええと、私はサイモンの母親と知り合いで、近所に暮らしていたんですけれど」

―――サイモンが生まれたときからご存知なんですね？
「ええ、そうですね、サイモンは・・・・・・
　サイモンは・・・・何からお話したらいいのかしら・・・
　サイモンには、ええと、父親がいないんです」

―――母子家庭だったんですね。
「ええ・・・、いえ、母子家庭と言いますか、父親がいないんです」

―――どういう意味ですか？
「あの・・・・彼女はなんて言いますか、女性が好きな女性で・・・」

―――なるほど。母親は同性愛者の方だったんですね。
「ええ。今の時代はいろんな価値観の方がいらっしゃいますし、
　医学的にもどうこうと言われておりますことですからとやかく言いませんでしたけれど、
　でも、神様は・・・・
　サイモンは生まれて来たとき死んでいたんです」

―――はい？
「２ヶ月も早く生まれて、未熟児で、生まれたとき心臓が止まっていたそうです。
　これは神がお与えになった罰なんです。
　彼女は父親が誰かもわからないって言っていました。
　こんなことってありますか？
　入れ替わり立ち替わり女性と同棲して、
　ヌードモデルなんてはしたないことして、
　私は何度も宣教したんです。でも彼女は聞き入れませんでした。
　部屋の中はいつもぐちゃぐちゃで、食事もまともに作っていませんでした。
　そんな状態で、サイモンも近所の子どもたちにいじめられていましたし、
　本当にかわいそうでしたけれど・・・・。
　でも・・・・これは口に出すのもおぞましいんですけれど、
　こんなことになってしまった以上、お話しないわけにもいきませんものね。
　神様、お許しください！ ＃∂▽®∫＃&#●≈ƒ√∂vß∫˙ç....」

（注：後半、なんて言ってるか聞き取れなかったんだけど、神に祈りを捧げているようだった）

「・・・・私には一人娘がおりました。
　宗教上の理由から学校には行っておりませんでしたので、
　友達が一人もおりませんでした。
　それが、サイモンには妙になついておりましたので、よく一緒に遊ばせておりました。
　サイモンはおとなしい子でしたし、私も油断していたんです。
　あれは、娘が９歳のときでした。
　サイモンと一緒に、やっと乗れるようになった自転車を漕いで遊びに行った帰り、
　大型トラックに轢かれて、死にました。
　即死だったそうです。
　事故の音を聞いて近所の方たちが集まったとき、
　サイモンは、血を・・・娘の血を・・・啜っていたそうです。
　地面に這いつくばって、ちろちろ、ちろちろと、血を、舐めていたそうです。
　血は命なんです！ それを・・・、それを・・・・・。
　なにもかも（ピー音：サイモンの母親の名前？）の信仰が足りないからこんなことになるんです！
　私が何度も宣教したのにまったく聞き入れないから神が罰をお与えになったんです！
　彼女もサイモンも悪魔なんです！！
　・・・・私は、何度も宣教したんです・・・罪を報いるように、
　神に赦しを請うように、何度も、何度も・・・」

　（そう言って、S夫人は泣き崩れた）