後世に語り継がれる物語を作った、
創造主たちの早すぎる死。
自分の寿命と引き換えに、
「いのち」ある物語を生み出してしまったからなのか?
奇妙な共通点は、その物語が生まれなければならない
「運命」にあったからなのでしょうか?
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ヴィラ・ディオダティの夜
2012.08.22
僕は去年までアメリカにいて、いろいろあって日本に戻って来たんだけど、
実は、というか、サイモン・ウィリアムズとは、友達というか知り合いで、
一度だけ、彼に会ったことがあったりする。
サイモンと知り合ったのは〈ヴィラ・ディオダティ〉っていうサイトなんだけど、
って、〈ヴィラ・ディオダティ〉の説明からはじめた方がいいのかな。
超有名な2大モンスターが誕生した記念すべき夜の話なんだけど、
意外と知られてないかもしれないって思うんだ。
まずは本家〈ヴィラ・ディオダティ〉について。
1816年、スイスのレマン湖畔に佇むバイロン卿の別荘ヴィラ・ディオダティに、
イギリスの詩人パーシー・シェリーとその愛人メアリー、
メアリーの義妹でバイロンの愛人でもあったクレア、
そしてバイロンの主治医で、バイロンと同性愛関係にあったとも言われてるジョン・ポリドリが集った。
前年に起きたインドネシアのタンボラ山大噴火の影響とも言われてるんだけど、
1816年は〈夏のない年〉とか呼ばれてて、北半球は異常に寒冷化していたそうだ。
霧雨が降り続き、底冷えするモンスター日和の夏の夜、
退屈しのぎにお互いに創作した怪談話を披露し合おうってことになった。
この日の夜話から生まれたのが『フランケンシュタイン』と『ヴァンパイア』。
のちに世界3大怪物と呼ばれる人造人間(『フランケンシュタイン』)、ヴァンパイア、狼男のうち、
2つのモンスターがこの夜、産声をあげたのだ。
ちなみにこの時の彼らの年齢を整理すると、
バイロン28歳、ポリドリ21歳、シェリー24歳、メアリーは19歳という若さ。
(左からバイロン、ポリドリ、シェリー、メアリー)
実際に小説として完成するのは『フランケンシュタイン』が2年後、
『ヴァンパイア』が3年後のことなんだけど、それにしたって若い。
ちょっと脱線するけど『フランケンシュタイン』をまだ読んだことないって人はぜひ読んでみてほしい。
〈フランケンシュタイン〉が怪物の名前ではなく博士の名前だってだけでトリビアになったりするかもしれない。
それよりなにより、この作品を20歳かそこらの女の子が書いたことに驚かされる。
その後の彼らの運命も不思議な因縁に満ちていている。
"ヴィラ・ディオダティの夜" から10年と経たないうちにメアリー以外の参加者全員が亡くなっているのだ。
その後、夫と子供二人を相次いで失なったメアリーは、何度か自殺未遂を経験しながらも54歳でその生涯の幕を閉じた。
もし、パーシー・シェリーとメアリーが出会っていなければ、
バイロンとメアリーの義妹クレアが愛人関係になかったら、
ポリドリがバイロンに対してゆがんだ愛情をもたなかったら、
あの年、インドネシアの火山が噴火しなかったら、
あの夏、異常なまでの冷夏にならなかったら、
あの日、冷たい雨が降り続けていなかったら、
かの怪物たちは誕生しなかった・・・かは、わからない。
むしろこの運命から誰も逃れられなかったんじゃないかって気がしてる。
『フランケンシュタイン』の〈怪物〉は、ミルトンの『失楽園』を森の中で拾い、
それこそバイブルのように愛読しているが、
このヴィラ・ディオダティ、もとはミルトンの友人であった
ジョヴァンニ・ディオダティっていう男の遠縁にあたるディオダティ家の持ち物で、
"ヴィラ・ディオダティの夜" から遡ること約200年前、
ミルトン自身が滞在したこともあるっていうからいよいよ恐ろしいじゃないか。
そんな因縁渦巻く〈ヴィラ・ディオダティ〉にあやかって作られたのが、
ヴァンパイアのファンサイト〈ヴィラ・ディオダティ〉。
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コメント(4)
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新米ヴァンパイア 2012.09.11
At last! Soomene with the insight to solve the problem!
Mirian 2012.09.19
That's what we've all been wiating for! Great posting!
Bhekizitha 2012.09.21
世界3大怪物は、
人間の本能を具現化したんだろうか?
誰もが秘めている狂気に、
世界の人々は無意識に共感したんだろうか。新米ヴァンパイア 2012.11.21
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